公益財団法人 全日本剣道連盟 All Japan Kendo Federation

アンチ・
ドーピング

アンチ・ドーピング規則違反Q&A(1)(コラム29)

 WADA(世界アンチ・ドーピング機構)は「アンチ・ドーピング規則違反」として10項目を定義しています。その1つに「禁止物質・禁止方法の使用または使用を企てること」とあります。今回は、この規則違反についてQ&A形式で解説します。以下の問1から問3の文章は正しい、誤っている、どちらに該当するか考えてみてください。

問1.禁止物質を使用する目的で入手はしたが、実際には使用を思いとどまったので、アンチ・ドーピング規則違反にはならない。

解説:(答え ×)ドーピング検査で採取された尿や血液から禁止物質が検出されなくても、禁止物質・禁止方法の使用や、企てたことが証明されるとアンチ・ドーピング規則違反となります。

問2.禁止物質を使用するメリットとデメリットについて選手・コーチが考えたが、結局、禁止物質は入手しなかった。したがって、アンチ・ドーピング規則違反ではない。

解説:(答え ◯)禁止物質や方法についてその善悪を考えること自体は違反ではありません。

問3.禁止されていない処方薬で喘息の発作が抑えきれず、生命の危機を感じたこともあり、やむを得ず禁止物質が含まれる薬剤を使用した。

解説:(答え ×)これは日本代表レベルにある選手で実際に起こった事例です。ドーピング規則違反の判断について競技者とJADA(日本アンチ・ドーピング機構)で意見が対立する事があります。そのような場合は「日本アンチ・ドーピング規律パネル」に委ねられ、今回の判断は、「緊急事態であったとしても救急患者として医療機関で受診するべきであった」と規則違反とみなし、資格停止2年という処分を下しました。

 アンチ・ドーピング規則違反の判断は簡単ではありませんが、日頃からドーピングに関するニュースに目を向けて、剣道界からのドーピング規則違反者ゼロを継続できるよう気を引き締めたいところです。

※アンチ・ドーピング規則違反は、詳細に検証しなければ判断できない場合があるため、今回取り上げた3つの問いも状況が少し異なれば答えも変わる可能性もあることを加えておきます。

「問3」で紹介した事例の詳細は以下のURLを参照ください。
https://www.playtruejapan.org/upload_files/uploads/2019/2019-02_final.pdf

アンチ・ドーピング委員会
委員 小澤聡

* この記事は、月刊「剣窓」2020年5月号の記事を再掲載しています。