公益財団法人 全日本剣道連盟 All Japan Kendo Federation

アンチ・
ドーピング

禁止物質の合法化—大麻の問題—(コラム38)

ドーピング禁止物質のS8カンナビノイド
競技会時のみ使用禁止に指定された物質に大麻とその関連物質があります。大麻は近年、スポーツ界のみならず世界で最も乱用され、特に若年者のより強い麻薬乱用への入り口と危険視されています。主たる成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)には、気分の高揚、食欲増進、多幸感、鎮痛・鎮痙効果などがあることが古くから知られています。反面、過量摂取により、幻覚作用による精神異常を誘発することも指摘されています。

日本では、近年若年者の大麻所持違反の検挙件数が増加の一途をたどっており、乱用が社会問題化しています。一方で、大麻から製造された医薬品は日本を除くG7諸国において難治性てんかんの治療薬として承認されるなど見直しが進んでいます。また嗜好用の大麻についても、カナダ、ウルグアイ、オランダや米国内のワシントン州、カリフォルニア州など多数の州が大麻を合法化してきており、医療用大麻合法化を含めると過半数の州で大麻を使用することが可能です。背景には、2018年世界保健機関(WHO)が国連に対して「医療用大麻の有効性—特に疼痛、睡眠障害、不安障害—」について、比較的安全であると報告したことがあります。

その流れの中で、東南アジアの観光大国・タイで6月10日に正式に大麻が合法化されました。日本では大麻取締法により罰則規定の設けられた所持、栽培、受け渡しという行為が、タイでは公式に可能になりました。ただし、娯楽目的や公共の場での吸引は厳罰に処せられ、またTHCの濃度は0・2%以下という条件付きです(通常社会問題となるのは10〜20%)。これにより飲食店では大麻入りの栄養食、飲料などを広く提供できるようになります。アヌティン保健大臣はCNNに対して「主たる目的は医療用の大麻政策の推進にある」と答えています。おまけにタイ政府は大麻産業による農業の活性化を期待し、全国に大麻草100万本を無償配布するということです。

海外往来が、活発化すると若年者が大麻に接する機会はますます増えます。大麻はごく身近にあります。七味唐辛子の中の「麻の実」も実は大麻の種子なのです。栽培しようとしても、すでに食用に加熱処理されており発芽しません。念のため。

アンチ・ドーピング委員会
委員 朝日茂樹

* この記事は、月刊「剣窓」2022年8月号の記事を再掲載しています。