公益財団法人 全日本剣道連盟 All Japan Kendo Federation

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マスク・シールド着用についての説明

 全剣連では、コロナ禍で剣道について「対人稽古に関する感染予防ガイドライン」により、マスク・マウスシールドの着用を定めていますが、最近、マスク・マウスシールドに関するお問い合わせが増えていますので、マスク・シールド着用について改めてご説明します。

 新型コロナの主な感染ルートは飛沫感染です。剣道では近距離で相手に対して気合を出しながら打突を加え防御を行うことから、当然、稽古や試合中に競技者の周囲に飛沫が飛散し、他の人を感染させるリスクが少なからずあります。

 そこで、全剣連では競技者の口や鼻から出る飛沫をどのようにしたら効果的に抑制できるかについて科学的調査を行いました(データは全剣連YouTubeに公開している動画「稽古自粛の解除及び感染ガイドライン制定」の中にあります)。その結果、気合から発せられる飛沫は、シールドだけでは防げず、面マスクが必要であり、面マスクとシールドを併用した時にもっとも防御効果が高いことが明らかになりました。

 全剣連ではこの結果に基づいて、剣道場ではマスク着用、面を付ける時にはマスクとシールドの着用をお願いしています。たとえ着用しない人がいても罰則がありません。したがって、形としてはお願いになっていますが、試合の際には相手を感染させては困ることから、「新型コロナ感染症が収束するまでの暫定的な試合審判法」があり、試合においてはマスク+シールドの着用が義務付けられています。

 もちろん、マスク着用には熱中症のリスクがあることから、全剣連はこれに対して繰り返し注意を促しています(ex. 令和2年6月30日更新「コロナ禍での熱中症の予防に向けて」、令和2年7月27日更新「面マスクに関するQ&A」(不織布マスクの酸欠に注意)、「暑熱順化」の重要性について)。

 さらに、令和3年8月4日「対人稽古に関する感染予防ガイドライン」では次の記載があります。

⑦ 稽古を行う者は、飛沫の飛散防止等のため、以下の対応を行う。
(ア) 稽古を行う者は、装着した者から相手への飛沫の飛散を防止するため、必ずマスク(以下「面マスク」)を着用する。面マスクは、鼻を覆って着用することとする。
(イ) 面マスクは、呼吸障害を避けるため、最近普及している剣道用の通気性のあるものを使用されたい。また、顎の部分を締め付けないもので、吐息が側方に逃げるものが望ましい。場合によっては、マスクの下にインナーフレームのようなものを入れて、マスクと口の間に空間を作ると、呼吸がしやすくなることがある。
(ウ) 変異株流行の折、相手からの飛沫を効率良く防止するため、マウスシールドの着用は必須とする。 シールドは、ポリカーボネイト積層板等の素材で製作された面金内側に装着する用具であるが、素材は特に指定しない。

 すなわち、不織布という指定はしていません。通気性の良いもので吐息に側方に逃げるものがのぞましい、インナーフレームのようなものを入れてマスクと口の間に空間を作る、というようなことを勧めています。

 さらに、同じガイドラインの中に次の記載があります。

⑧ これらの用具を装着する際には、熱中症の発症を防ぐため、以下のことに特に気をつける。
1) 暑さにからだを慣らすことが重要なので、暑熱順化をすること(詳細は 以下を参照:https://www.kendo.or.jp/knowledge/medicine-science/heatadaptability/
2) 稽古日の気温、湿度をチェックし、特に道場の温度と風通しに気をつけること。 3) 練習前に水分をとるとともに、稽古の間も休憩時間に水分をとり、水分 補給に十分に気をつけること。
4) 暑い時の面マスクとシールドの着用はからだに堪えるので、稽古時間を普通より短くすること(できれば一回 30 分以内)。
5) おかしいなと思ったら自ら無理をしないこと。
6) 周りの人たちにも目を配り、無理をさせないこと。
7) 普段から規則正しい生活をして、体調管理に気をつけること。

 つまり、熱中症に対して注意するように周知をしています。

 次に、マスク内での酸素濃度のことに関しては、次の記載があります。

『全日本剣道連盟の調査では、不織布マスクは飛沫飛散防止に関しては手拭い製の面マスクと同等か、あるいはすぐれた効果を示すものもありました。ただし、今回の調査では息苦しさや通気性については調査をしていません。不織布の中には通常の布素材に比べて通気性が低いものがあります。実際、全日本剣道連盟が行っている熱中症報告システムの解析結果では、不織布マスクの使用によって酸素欠乏状態(いわゆる酸欠)になったことがうかがわれる報告がありました。このため、不織布マスクの場合には特に酸欠には気をつける必要があります(面マスクに関するQ&A)。』

 つまり、剣道の際に使用を勧めているのは、呼吸のしやすい剣道用マスクであって、通常の不織布マスクではありません。また、マスク内で必要以上に酸素濃度が下がらないように、上記のとおり、具体的なアドバイスをしております。

 以上、まとめますと、全剣連としては、新型コロナがさらに収まるまでの間は、当面はこれまでどおり、マスクとシールドの着用を基本とするとともに、熱中症やマスク着用による低酸素問題に関しては、種々の対策を立てており、引き続き適切な情報を提供していく所存です。

追記

 新型コロナはオミクロン変異株が出てから感染性が高まり、マイクロ飛沫による感染(俗にいう空気感染)も増えています。これに関して「空気感染にはマスクは無効である」という意見がありますが、実際に全剣連が行った科学調査では、マスクは口から出る大きな飛沫はもちろんのこと、マイクロ飛沫のような小さな飛沫に対しても飛散を一定程度抑制することが明らかになっています。したがって、現時点でもマスク着用は感染リスクを下げるために有効であると考えています。

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