
図書
『令和版剣道百家箴』
「令和版剣道百家箴」
剣道範士 髙﨑 慶男(茨城県)
まだあげ初めし前髪の 林檎のもとにみえしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思いけり*1
春のうららの 隅田川 のぼりくだりの 船人が 擢のしずくも 花と散る ながめを何に たとふべき*2
春高楼の 花の宴 巡る盃 影さして 千代の松が枝 分け出でし 昔の光 今いずこ*3
秋の夕日に照る山紅葉 濃いも薄いも数ある中に 松をいろどる楓や蔦は 山のふもとの裾模様*4
小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ 緑なす蘩蔞は萌えず 若草も藉くによしなし しろがねの衾の岡辺 日に溶けて淡雪流る*5
待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬさうな*6
菜の花畠に入り日薄れ 見わたす山の端霞深し 春風そよ吹く空を見れば 夕月かかりて 匂い淡し*7
日本の叙情の歌や詩は心が洗われ静かに体感にしみます、声を出して詠んでみる。
偖も義臣すぐつて此城にこもり、功名一時の叢となる。「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」と、笠打敷て、時のうつるまで泪を落し侍りぬ。*8
夏草や 兵どもが 夢の跡*9
思えば去年船出して 御国が見えずなった時 玄界灘に手を握り 名をなのったが初めにて それより後は一本の 煙草も二人わけてのみ ついた手紙も見せ合うて 身の上ばなしくりかえし 肩を抱いては口癖に どうせ命はないものよ 死んだら骨を頼むぞと 言い交わしたる二人仲 思いもよらぬ我一人 不思議に命ながらえて 赤い夕陽の満州に 友の墓穴掘ろうとは*10
私のこと戦の青春譜です。私は元陸軍少尉です。
不来方の お城の草に 寝ころびて 空に吸われし 十五の心
東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる*11
修行に終わりはない。望み続ける工夫がすべてである。竹刀は時折、無音がある人の言葉では通じ無い。
感覚が兆しを知る。それを瞬息という。
攻め勝って 乗り溜めて 割って入る面
(私の持論 有効打突の妙)
立ち姿の美しさ
品のある強さ 理合のある巧さ
(無駄を省く 打突の妙)
相打ちの先
一打一会を追う人は学ぶことを怠らない
修行とは
自分に与えられた宿命である
眞の剣道人とは
○心は見えないが 心づかいは見える
○思いは見えないが 思いやりは見える
○花咲き花薫る 花つぼみ 尚薫る
○そこに居ないとみんなが困る人
○だれも自分の背中は見えない。だから素直に人の言うことを聞ける人
思い通りにゆかない、それが面白い、だからかけなんです。あきらめてはいけない。
相手を尊重すると自分も尊重される。
100歳になって責任の重さを知る。
それは伝承する義務があるからです。
私は令和7年1月16日に満102才です。(受付日:令和6年12月10日)
*1 島崎 藤村 「初恋」の一節より
*2 滝 廉太郎作曲 唱歌「花」の歌詞より
*3 滝 廉太郎作曲「荒城の月」の歌詞より
*4 童謡「紅葉」の歌詞より
*5 島崎 藤村「小諸なる古城のほとり」の一節より
*6多 忠亮 作曲「宵待草」の歌詞より
*7「おぼろ月夜」の歌詞より
*8松尾 芭蕉「奥の細道」より
*9松尾 芭蕉「奥の細道」より
*10美空 ひばり「戦友」の歌詞より
*11石川 啄木 歌集「一握の砂」より
*『令和版剣道百家箴』は、2025年1月より、全剣連ホームページに掲載しております。詳しくは「はじめに」をご覧ください。