公益財団法人 全日本剣道連盟 All Japan Kendo Federation

アンチ・
ドーピング

東京オリンピック・パラリンピックを振り返る(コラム35)

 国際的スポーツ大会につきものなのが、やはりドーピング検査です。今回は東京オリンピック・パラリンピックにおけるドーピングに関連するトピックスを2つ紹介します。

 一つ目は、ペットボトルの飲み残し問題です。東京五輪では、弁当の大量廃棄が話題になりましたが、他にも大会関係者の休憩室に一口だけ飲んで捨てられるペットボトルが大量にあったということが、一部のメディアで取り上げられ、ネット上で議論が白熱しました。この点について、陸上400メートルハードル世界選手権銅メダリストの為末大さんが「選手がペットボトルを残したまま捨てるのは、ペットボトルに誰かにドーピング薬を入れられ出場停止になることを恐れ、一度目を離したら常に蓋が開いていないものを飲むように教えられている為です」と解説し、鎮火しました。

 我々もドーピング検査の対象となりえる剣道選手には、「一度目を離した飲料は飲まないように」と指導しています。しかし、飲み残したまま放置したり、捨てたりするのはマナー違反です。剣道家としては、マナーを遵守したいものです。

 二つ目は、検査手法についてです。東京五輪では、最新のドーピング検査手法である「乾燥血液スポット検査」(DBS)が試験的に取り入れられました。これまで、血液採取は、注射針を刺すことで神経を損傷する可能性を指摘されていました。特に剣道では腕や手指の感覚がとても重要となる競技であり、我々は注射針による血液採取には否定的な見解を示してきました。しかし、今回取り入れられたDBSは、指先から少量の血液サンプルを採取し、専用の台紙に染み込ませて反応を見る検査で、神経を傷つける危険性が大きく減少しました。さらに、従来の尿検査や血液採取に比べて手間がかからず、精度も十分とされています。剣道選手が安心して検査に臨めるような方法が開発されたことは、剣道界にとっても良いニュースでした。

 様々な場面でマナーの向上に努め、ドーピング検査の協力をすることで、礼節をもち、ドーピング検査陽性者ゼロというスポーツ界で模範となる剣道であり続けていきたいものです。

アンチ・ドーピング委員会
委員 小澤聡

* この記事は、月刊「剣窓」2021年11月号の記事を再掲載しています。