アンチ・
ドーピング
東京五輪で導入が予定される新血液検査法DBSとは(コラム32)
ドーピング検査は通常の尿検査に加えて、検出や分析が困難な禁止物質に関しては、従来、定期的に肘の静脈から15‐20mlの採血検体を保管して禁止物質が使用された痕跡を追う生物学的パスポートという手法が用いられてきた。
これはアスリートの腕の静脈を針で穿刺し採血することになり、稀ではあるが、肘の周辺の末梢神経損傷とその後の痛みやしびれを伴う危険性があることを全日本剣道連盟では早くから指摘し、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)に対し、当委員長から正式な問い合わせをしてきたが、公式な回答が得られないまま数年間経過してきた。
JADAでは利き腕ではない腕からの採血とは断っているが、競技力はもとより、集中力に影響することはあきらかなことで、日本赤十字社でさえ献血(採血)時の副作用と注意として予め公表している。この解決方法として、最近、乾燥血液スポット(DBS)検査と呼ばれる新方法が開発され、延期された2021年の東京五輪、パラリンクピックで導入が検討されている。
乾燥血液スポット(Dried Blood Spot;DBS)とは、糖尿病患者さんの簡易血糖測定のように、ごく細い針で指先を穿刺して、一滴程度の血液を採取し、乾燥させることで、アスリートへの侵襲性を減らし、これまで諸々の制約があった検体搬送や保管の簡便化が図れる技術として開発された。
また、共同通信によると、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は、痛みやしびれなどの後遺症を伴う可能性のある現行の静脈採血や手間の掛かる尿検査に替わる画期的な方法として「より多くの選手を対象に、より多くの検体採取が可能になる」といっそうの違反摘発への効果を強調していきたいとしている。
アンチ・ドーピング委員会
委員 朝日茂樹
* この記事は、月刊「剣窓」2021年2月号の記事を再掲載しています。