公益財団法人 全日本剣道連盟 All Japan Kendo Federation

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2022年度 剣道における熱中症への取り組み(最終報告)

 2022年4月末より開始された「剣道における熱中症報告 報告フォーム」によるオンライン報告システムが10月26日にて終了しましたため、概要と考察をご報告いたします。

【報告件数】14件

月間報告数

【重症度内訳】(注:重症度の申告は会員の判断による)

【性別】

【発症者の年代】

【発生時の温度】

【発生時のエアコンの使用】

【発生時の換気の実施】

【発症者のマスクの使用】

【発症者の飛沫対策】

【救急搬送】

【概要】

  • 10月26日までに14件の熱中症発生報告があった。昨年(3件)より増加したものの、一昨年(22件)と比べるとむしろ減少していた。
  • 熱中症の重症度はⅡ度が8例(57%)、III度が2例(14%)であった。5月・6月までの報告ではII度が多かったものの、その後は昨年(67%)・一昨年(59%)と比べ明らかな増加は認めなかった。
  • 発症年齢は小学生5例(36%)、中学生4例(29%)と半数以上が若年者であった。
  • 14件中5件(36%)は気温が31℃以上の環境での稽古であり、昨年(33%)、一昨年(9%)の報告に比べ高い傾向にあった。さらに3件(21%)は35℃以上の環境で稽古が行われていた。
  • 24℃以下で発生した熱中症は3件(21%)であり、そのうち2件は5月25日、6月10日と早い時期に生じていた。
  • WBGT計についての回答は3件(21%)であった。
  • 12件(86%)ではエアコンを不使用であった。また2件では換気が行われていなかった。
  • 全例でマスクを着用、12件(86%)で口元タイプのフェイスシールドを着用していた。1件は全剣連で警告している不織布マスクを着用していた。面マスク、マウスシールド着用が全剣連のガイドラインにあるが、これを満たしていない症例がみられた。
  • 報告例の中には「その場で休憩」「外の道路で寝転んで水分補給」「稽古中の水分補給を行わず」など、熱中症の対策として適切ではない対応も見られた。

【考察】

  • 熱中症の報告件数および重症度は昨年より増加したものの、一昨年と比べ減少傾向にあった。
  • 5月、6月の報告件数が4件(29%)と多く、かつ比較的低い気温で2件の熱中症が生じており、稽古前の暑熱順化(※1)が不十分であった可能性がある。
  • 小学生、中学生などの体温調節能力の低い年齢が多い傾向がみられた。この年代の剣道実施にあたっては、涼しい場所でのこまめな休憩を入れる等、指導者に細心の注意をお願いしたい。
  • 5件(36%)は熱中症予防のための運動指針(※2)の「厳重警戒」レベル以上の環境で稽古を行っており、稽古をすべき環境ではなかった可能性がある。
  • 面マスク及びマウスシールド着用は全例に行われていないが、感染対策の面からは全剣連ガイドラインの徹底が勧められる。
  • 高温環境でない例においても無風・高湿の報告があった。熱中症の防止には温度、湿度の両方の測定が必要である。一昨年来、全剣連として暑さ指数(WBGT)計の使用を推奨してきており、道場・体育館への設置を一層お願いしたい。
  • 8割以上でエアコン(空調)が使用されておらず、とくに5月・6月には不使用例が目立った。特に暑熱順化が十分でない状況下、高温である時においては、できればエアコンを使用することが望ましい。
  • エアコンのない施設においては、設置の検討をすることが望ましい。
  • 熱中症への対応として、冷房のない状況で休ませるなど不適切と思われる対応が散見された。とくに10月に発症した1件については、胃腸症状があり、かつ水分摂取を行わない状況で重度の脳貧血様症状を起こしていることから、脱水や過換気症候群も合併していた可能性も高いと考えた。剣道指導者が熱中症への対応(※3)につき、正しい理解を得ることが推奨される。

 以上より、一部の剣道指導者は暑熱順化の必要性、稽古時間と量の再考などを検討することが求められる。

※1:暑熱順化
※2:日本スポーツ協会「熱中症予防のための運動指針
※3:剣道と医・科学:熱中症

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