全日本剣道連盟
International Information HOME

大会・審査会 行事予定 剣道について 画像・動画 寄稿「まど」 ダウンロード 通信販売
HOME >







 
 

     「EXPO剣道フェスティバル」の総合司会にあたって      実行委員会委員
     高橋 亨


  愛知万博・長久手会場一帯は、1584年徳川家康勢と豊臣秀吉が争った古戦場跡でもあります。      会場内「北駅」と「南駅」を結ぶゴンドラ(キッコロ・ゴンドラ)からの眺めは、各パビリオンの先端技術を駆使した設計とともに、日本庭園なども配置され、そのコントラストの妙に、この万博が「自然の叡智」を看板の一つに据えるのもうなずけます。なだらかな丘陵地帯の端々に、サムライたちが駆け巡ったであろう往時の光景が偲ばれるようで、歴史へのロマンをかき立てられる方も多いのではないでしょうか。


 「EXPO剣道フェスティバル」が行われる「EXPOドーム」は「南駅」付近に位置しています。ベレー帽が山肌に舞い降りたようなドーム形式の建物でありながら、客席後方はすべて「吹き抜け」になっており、圧迫感のないしゃれた劇場風のたたずまいです。今回の「剣道フェスティバル」は4時間の長丁場ですが、お見え頂いた方には、ゆったりとした雰囲気の中で鑑賞して頂けることでしょう。


 私たちは、この催事の成功のポイントは、この「EXPOドーム」をどのように使いこなすか?≠ノかかっていると考えています。従って、万博協会側との打ち合わせも、演武内容以前の一般客への宣伝や誘導、設営といった点に交渉の力点が注がれるわけです。当然、演武に使用される「真剣」などは、テロ対策からも、許可、管理の通過手続きは山ほどあります。剣道大会の企画、運営方法とはあまりにもかけ離れた取り組みに、戸惑うこともたびたびです。


 6月29日の協会側との打ち合わせも、集客の方法、その受け入れ対応に始まり、もっぱら音響、照明、映像設備などをどのように仕込み、活用するかに多くの時間が割かれました。これも観客席の方々が、演武内容をより効果的に味わって頂く工夫の一環といえるでしょう。


 さて、具体的な演武のシナリオ作りも詰めの段階に差しかかってきました。ステージ上の熱演が、観客にいかに臨場感のある、また説得力のある形で伝えられるか。これまた極めて専門的な演出、指揮の準備作業の必要性を痛感しています。幸い、これから全体の進行台本に沿う形で、それぞれの部門のリハーサルも行われる予定もあり、よりメリハリのきいた演武内容に仕上がっていくものと確信しています。

 ところで、国内では1970年の大阪万博以来の愛知万博ですが、剣道史を振り返ってみれば、国際剣道連盟設立とともに「第1回世界剣道選手権大会」が開催されたのが1970年でした。以来35年、名実ともに発展した外国人剣士の「いま」を紹介する第3部は、今フェスティバルのハイライトです。世界大会とは全く違った趣の中、私たちはもう一度剣道の魅力を彼らの姿を通して、剣道が世界へ向けて発信するメッセージとして気付かされ、再確認できるかもしれません。
 実行委員会に、出場の外国人選手たちが、こんな感想を寄せています。


 「竹刀を交える時、友となるのは真実です。このイベントで多くの友をつくり、旧友とは更に強固な友情を結ぶでしょう。これは国際的観客と共に、この美しい武道を共有する最高の機会のなかで、世界平和を促進し、お互いの『了解』と『命』の価値を認め合えます」                     (マレーシア・デービッド チャン氏)


 「21世紀最初の万博において、剣道が披露されるのは非常に嬉しいことです。日本の伝統文化が世界の人々によって楽しまれることは特に喜ばしいこと。剣道特有の文化は、社会に積極的に貢献し協力する為の自治能力と、それを高
めるひらめきを植えつけます。そのような特性が個別に培われて、個々の人生における充足感を可能にするだけでなく、社会への調和も促進します。剣道文化はかなり古いのですが、今もなお、この伝統から得るものがあるのです」
                                                (アメリカ・マイケル 香本氏)


 彼らの剣道に対する期待に、私たちは改めて耳を澄まそうではありませんか。



 さて、「EXPO剣道フェスティバル」を締めくくる第4部「剣道いまから」もまた剣道の未来を探る企画として、注目を集めることでしょう。担当の作道正夫大阪体育大学教授は、「剣の理法の修錬」の中味は、伝統的な日本の身体文化(腰肚、股下(またした)空間の多様性)の継承にあることを提唱されています。ステージ脇の大スクリーンを利用して、愛知県出身の大リーガー・イチロー選手のバッティングフォームと剣道の基本技術との関連性を解き明かしていく試みは、新鮮なものになるでしょう。同時に、生涯剣道を標榜する「剣道の叡智」が、スポーツ一般を超えて楽しく、親しみのもてるものであることを具体的に公開して頂けるのではないでしょうか。

 当日の司会進行は、日々野真理さんと私とで務めさせて頂きます。日々野さんは、フリーのアナウンサーとして、サッカー関連番組、情報番組のキャスターなどで活躍中の方です。ご自身もスポーツウーマンですが、不思議とこれまで剣道とは縁がなかったとか。

 「真っ白な気持ちで向き合える今回の関わりに大変興味があります」と述べています。もしかしたら、マイクを竹刀に持ち替えての飛び入り参加、という場面があるかもしれません。
彼女の颯爽とした語りが、きっと「剣道フェスティバル」に華を添えてくれるものと思います。



 先の「長久手の戦い」の折り、数万の大軍豊臣勢へわずか300騎で立ち向かい、釘付けにした武将本多忠勝の働きは、秀吉を唸らせたという有名な史話が残っています。この「EXPO剣道フェスティバル」での「伝統の技」の演武が、当日の観客も含めて、世界の剣道愛好者の眼を「釘付け」にすることを願っています。


 8月31日の本番まで、1カ月半となりました。21世紀最初の国際博覧会「愛・地球博」での剣道の出番が、いよいよ刻一刻と迫っています。




   
     万博剣道「一発成功」に向けて      EXPO剣道催事実行委員会
     


『愛・地球博』の公式参加催事である『EXPO剣道フェスティバル』の開催日8月31日(水)がいよいよ迫ってきました。

主管の愛知剣連は、さる7月26日(火)、台風7号接近予報下の愛知県立武道館に、当日出場参加者の県下小・中学生、大学剣道部員、女性剣士らを集め、第1回リハーサルを行いました。


 当日のステージで、いかに正座するか、どのように切り返しや掛かり稽古を大観衆に見てもらうのか。そして面付けを何度も練習して、すばやく短時間ですませることにびっしり汗をかきました。直前の8月26日(金)にも、愛知剣連は第1部の総リハーサルを行う予定で、このイベントの「一発成功」に、傘下組織全員が燃えています。


 万博全体が予想以上の盛況ぶりです。当日は会場のEXPOドーム(3,000席)はほぼ満席となり、立ち見客の可能性もあるだろうと、国際博覧会協会事務局はいいます。剣道への関心は意外なほど高いようです。主催者全剣連と愛知剣連は、改めて入場者受け入れ、会場整理に万全を期すよう態勢を整えています。

 『剣窓』、『全剣連ホームページ』の読者、剣道関係者の皆様には、開場時間の11:15までに、EXPOドームに到着されるようお勧めします。交通機関の所要時間、万博会場内の乗り物券売り場の行列など含め、十分時間的余裕をお持ちのうえお越し下さいますよう。JR名古屋駅からEXPOドームまで最低2時間を想定して下さい。




剣道アニメ『鳥獣剣士』初公開


 日本のアニメは世界でもトップレベルにありますが、東京藝術大学美術学部油絵科卒業の名取祐一郎氏は、これまでのアニメ映画やテレビアニメ技術とは違った独特の手法で制作を手がけてきました。国内や世界のコンクールで数々の賞を受けた新進気鋭の制作者です。

 剣道をテーマにしたアニメ制作を、実行委員会が依頼したのは、2003年末のことです。名取氏は小学校時代、剣道を体験したこともあって、以来2年余り熱心に全日本剣道選手権大会など多くの試合や国内道場での稽古を見学し、さらには、外国人がどのように剣道や居合道を稽古しているのかを確かめるため、北欧フィンランドやエストニアなどを訪れ構想を練ってきました。

 EXPOドームの最新アストロビジョン大画面で、その成果が初公開されます。4部構成のプログラムの合間に、剣道アニメは各5分計15分の3幕物語です。題して『鳥獣剣士』。トラやツルたちが剣道を知り、面白がってやっているうち、やがて何かを考えるようになる、という展開です。




 鳥羽僧正の「鳥獣戯画」のカエルやウサギたちのお相撲を思わせ、バックの四季折々の風景は、巨匠狩野芳崖のような豪華繊細さです。剣道と日本画が合体した現代の日本文化が、このCGアニメに凝縮されており、「交剣知愛」「三世同堂」「稽古・鍛錬」「礼節と和」ということばの意味が、分かり易く、こどもや高齢者たちの腑にすっと落ちることでしょう。
 8月1日(月)、全剣連九段事務所での総務・広報小委員会(「剣窓」編集委員会)の冒頭、『鳥獣剣士』の試写会が行われました。期待にたがわぬ出来映えに、委員たちから賞賛のことばが相次ぎました。画面の科白は、英語のスーパーインポーズ付きで、海外でも楽しんで理解してくれるでしょう。地域で青少年たちに剣道と居合の指導をされている委員のひとりは「このアニメを全国の稽古会などで是非見てもらいたいもの」との感想を述べていました。






剣道ミュージック作曲大公募


 全剣連は、かねてから剣道のテーマミュージックを模索していましたが、EXPOの公式参加行事開催を機会に、一般大公募を試みました。佐藤 眞・東京藝大音楽学部作曲科教授を審査委員長に、加賀谷誠一EXPO剣道催事実行委員会委員長らの審査委員会は、6月1日から14日までの期間に応募作品を受付けました。日本全国とイタリア、アメリカ、シンガポールなど海外から26点の作品が寄せられ、洋楽、邦楽、トランペットソロ、エレクトーンなどジャンルも多彩で、応募者は7歳から60歳代までと、老若男女、職業もさまざまでした。


 慎重審査の結果、7月上旬に最優秀作曲賞として、海外でコンクール受賞多数のプロの作曲家、東京都在住・池田 悟氏(44)の『剣士のパヴァーヌ』が選ばれました。「パヴァーヌ」とは、フランス語で「荘重な舞曲」という意味ですが、これは琵琶、箏などで演奏する邦楽です。池田氏にとって、最初に手がけた本格的邦楽作品。「剣道の、とくに厳しさをイメージして作ってみました」と、応募の動機を話されています。


 EXPOドームで作品を発表するため、8月5日(金)に、東京・代々木のスタジオで演奏録音を行いました。池田氏自身が指揮棒を取り、薩摩(さつま)琵琶(びわ)・久保田晶子、二(に)十(じゅう)弦(げん)箏(こと)・高橋はるな、同・久東寿子、尺八・遠藤直幸、龍(りゅう)笛(てき)・桑原治子、打物(うちもの)・島 萌黄、同・石井千鶴ら7名の専門家、藝大音楽学部学生の皆さんが何度もリハーサルを繰り返し、本番では呼吸をぴったり合わせ、見事に収録を終えました。邦楽器独特の静と動の転換が、人の胸に何事かを訴える素晴らしい曲でした。


剣士のパヴァーヌ』の試聴(WAV形式/14.5秒/191KB)


 また、国立音楽大学大学院生、橋本裕樹氏(23)の『糸―いと―』が佳作として1点選ばれました。弦楽四重奏の洋楽で、邦楽の最優秀作品とはまた趣の違う剣道のイメージが、審査委員の関心を引きました。この曲も近く演奏収録し、『剣士のパヴァーヌ』と合わせて1枚のCDに納めます。これから、剣道の大試合や各地の催事で、この二つの荘重流麗な調べが会場に感動を与えてくれるものと、期待されます。



EXPO剣道特別記念品の制作


 愛知万博の前触れコピーに「人生一度は、万博だ!」というものがありました。万博で剣道の演武をする人々は、文字通り人生一回きりの経験でしょう。実行委員会は、出場者や運営協力者の皆様の貴重な体験を思い、特別の記念品を準備しました。デザイン・制作は東京藝大美術学部彫金科の飯野一朗教授です。


 さまざまなアイデアの中から、飯野教授はデザインを『鹿角の鍔』に決めました。純銀製の刀の鍔を模した円形のメダルです(写真実物大)。ペンダントにしても落ち着いた雰囲気です。なぜ、「鹿角」なのかというと、16世紀の戦国時代、徳川家康勢の武将・本多忠勝の兜飾りが鹿の角だったことに由来します。


 忠勝はわずか300騎で数万の秀吉勢を釘付けにしたほか、多くの合戦において冷静果敢に振舞うなど、武将としての勇気と知恵を合せ持った人物といわれます。EXPOドームのある万博長久手会場は、まさに秀吉に対峙した「小牧長久手の合戦」の跡地でありました。特別記念品にも剣道精神の意味が込められたことに、飯野教授とともに実行委員会は、EXPOと剣道のつながりに格別の感慨を覚えるものです。

(文責・鴨志田恵一)

















  「愛・地球博」HP   http://www.expo2005.or.jp  イベント/イベントカレンダー/8月/31日に剣道フェスティバル記載

全日本剣道連盟のご紹介 関連団体 プライバシーポリシー お問い合せ サイトマップ
Copyright All Japan Kendo Federation1998-2007