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平成13年10月号 第171回

新しい業務執行体制構築

夏までの充実期を経て、剣道界は秋を迎えての展開期に入ります。一方全剣連では、業務執行の体制、専門委員会の展開を準備しました。9月23日前橋市での東西対抗剣道大会前日の恒例の理事会で決定し、走りだします。1年おきの役員改選の年の決まったパターンです。

新役員決定から夏期に入り、纏まっての検討が出来にくいこと、事業の重点に普及・教育の推進など新たな展開に取り組もうとしたこともあり、立案・調整に時間を取りました。この間も当面の仕事は順調に進んでいます。

専門委員会の組み替え、メンバーにも新戦力を加え、やっと企画・改善を要する問題への取り組みを行う新体制ができました。役員、専門委員会のフル稼働が始まることを期待しております。

普及・教育事業の検討への取り組み

ここ何年かの全剣連の事業の重点は、剣道の奨励のための試合・審判規則の近代化を行い、続いて奨励、進歩を支える制度である称号・段位制度の見直しなど運用の充実に取り組んで来ました。しかしこれらは日常、あるいは全国津々浦々での剣道の水準を高めるための基盤であり、支援策の立場になります。今までなかなか効果的に取り組んでこれなかったのが、普及・教育の領域で、前にも述べたかと思いますが、これこそ城で言えば本丸になります。全剣連は諸般の準備体制を終えて、本丸に攻めかかるべきことをこの2年間の重点施策にしようとしています。

このための検討と推進を進めるため、普及業務委員会を独立させ、普及事業とくに大会などの業務の調整を行うこととしましたが、さらにこれに普及の全般的企画を行う、普及企画機能をあわせ持たせることにしました。

一方講習事業の内容充実を図る方策を検討し、推進を後押しする機構として普及・教育専門委員会を設け、この中に強化部会と指導部会を置きます。実施のための検討は委員会自体で行いますが、部会は実行部隊の性格も持つので、これまでの専門委員会とは少しく異なり推進本部的な性格を兼ね備えるものになるかと思います。

普及・教育においては、審判に関するものも重要ですが、これにはすでに試合・審判委員会で、審判員の技術向上に取り組んでいますので、これを受けての実行になりましょう。

剣道形についての教育も重要で、このための部会を設ける案がありますが、これについては現行解説書において読み方が分かりにくい部分の解釈に疑問が出された部分がいくつもあり、沿革に溯って剣道形を検討すべきであるとの意見も常任理事会で出されていますが、いずれにせよ検討の方向を定めて、スタートすることになります。

さて普及・教育問題について、常任理事会での討議で、多く出された意見は、全剣連に指導法における具体的指針を纏めるべきというものでしたが、「幼少年指導要領」の内容を活用できるとも見られ、この作業の進め方、今後の教育の推進方法などに、新しい体制で取り組むことになります。

女子選手権大会、充実してきたがもう一歩という印象

秋の大会のトップを飾る第40回の全日本女子剣道選手権大会は、9月2日名古屋市で開催され、堀口恭子選手(山梨県)が、これまで、準優勝2回の古豪有馬佳代選手(鹿児島県)を下して初優勝、皇后杯を授与されました。3連覇成るかと注目された朝比奈静香選手(東京都)は、出だしはよかったが三回戦で9回目出場の村山千夏選手(埼玉県)に敗れました。体調は万全でなかったようです。

以前は一、二回戦あたりによく見られた、これが選手権かといった試合はまず見られず、水準の向上が感じられました。

ただ勝ち進んだ後の試合の決まり技で、離れ際の技が目立ったり、目の覚めるような技が殆ど見られなかった事など、内容的には物足りない感が残りました。

出場選手の平均年齢は24.2才、初出場選手が半数に近い28人でした。しかし学生、高校生を含めた若手には壁が厚く、ベスト8に残った顔触れは1人を除いて、4回以上出場の選手で、平均年齢26才でした。女子選手権も経験を積んだ選手が上位を占める時代になつたのは、水準の向上を反映したものと見てよいでしょう。観客数では寂しい状況で、会場での試合は盛り上がり熱気の点でも今じとつだったのは惜しまれます。

久方振りで開かれたアセアン剣道大会を見て

回数として第6回目を迎えますが、6年ぶりに9月9、10の両日開かれた大会にお招きを受けてシンガポールを訪れました。印象を一口で述べるならば、感銘深く拝見したということです。

さてASEANは東南アジア国家連合の略称ですが、その発足時の参加国であった5つの国が参加しての今次大会は、ささやかな剣道大会ですが、大きな意味のある大会だったと思います。

まず挙げるべきことは、なかなか広がりを見せなかったこの地域での剣道が、ようやくここまで育ってきたということです。参加国は、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアの諸国でした。前の2国は剣道の歴史もあり、国際剣連にも加盟しており、世界大会にも出ています。その他の3国は後発ですが、経済的困難も乗り越え、揃って男女チームを派遣し参加しました。

 

この大会は今後の地域剣道の発展に大きな役割を果たすことでしょう。参加の5ケ国、いずれも経済面で、日本と密接な関係にあるアジアの大国です。タイを除いては第二次大戦前の、欧米諸国植民地から独立を果たした新興国です。これらの諸国に剣道が普及し、それらの国同士、また日本との交流、理解が進むことは、利害関係ということを越えて、望ましいことと思います。

大会の主催はシンガポール剣連で、多くのメンバーが手作りで大会の準備、運営を進めたそうです。さらに当地には多数の在留邦人の剣士がおられ、常に現地の人と一緒に活動を行っておられます。それらの方が大会を実技面で支え、援助して大会を成功させました。

さらに参加国で常に指導、奨励に当たっておられる駐在の日本人剣士がそれぞれ各国から集い、あるいはOBとして日本から馳せ参じた方もおられました。こうした方は合計で30人を超す数で、審判は、全員これらの方で処理されましたが、関係日本人の国別対抗試合をやったら面白いと思われるほどの顔触れでした。また駐在の奥さん方に細かいお世話を戴いたことも印象に残ることでした。

大会の内容、レベルは特に申し上げるほどのものはありませんが、各国が女子のチームまで出して堂々と戦いました。先発2国がやはり強く、女子のシンガポール、男子のマレーシアがそれぞれ強みを発揮して、個人、団体共に制覇、あとタイがこれに追随する状況で、あと2国は、勝ち星を挙げるのが珍しいという状況でした。

身に付ける用具は思ったより良かったと思いましたが、その中で富士山マークを付けた全剣連寄贈品が目につきました。

今後の各国剣道の発展を期待できる段階にきたのを目の当たりにできたのが何よりの収穫でしたが、駐在日本人のかたも今後の一層のご尽力戴くよう切望します。

断片

(1)夏の剣道六、七段審査会、今年は福岡の六、七段のほか、宇都宮と3年ぶりに札幌で行いました。合計3千を超す受審者のうち557人が合格されました。全般に女性の活動が目立ち、宇都宮の六段審査では、受審者の中で女性が1割を越え、15人が合格。福岡の審査では、4人の女性七段が誕生、注目を集めました。

(2)9月8、9日には、居合道中央講習会を京都・武道センターで開催、全国からの中核要員100人が熱心に受講されました。

(3)アセアン大会から、10日に帰国、翌11日は台風15号が首都圏で暴れる中、予定通り常任理事会で、活発な討議を終え、少しく懇談のあと帰宅してテレビのニュースを見たところ、飛び込んだのが、ニューヨークの航空機によるテロの映像でした。この暴挙を憎み、犠牲になられた日本人の方、救援活動中に被害を受けた消防、警察の方その他多くの方に謹んで哀悼の意を表します

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